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4分間のピアニスト

4分間のピアニスト

監督:クリス・クラウス
2006年 ドイツ

またピアニストかよ。海の上とか戦場とか、至るところピアニストだらけだナ。どうせまたあれだろ、お高くとまって文芸の香りも高く、最後は深い余韻と共に涙を誘おうって寸法だろ。そうはいくかい。

などとどうでもいいことを考えながら見始めると、これがとんでもなかった。いや、良い意味で。

刑務所でピアノ教室の講師をしている老女と、彼女に才能を買われた若い女囚との物語です。老女は古式ゆかしく格調の高いものを好む頑迷で無口な人。女囚は男の看守をボコボコにしてしまうような跳ねっ返りで自暴自棄の塊だがピアノの才能だけはピカ一。そんな二人が衝突しながら、おまけに刑務官や他の囚人たちの陰湿な嫌がらせにも耐えながら、ともにコンテストでの優勝を目指してレッスンに励す姿を、ダイアログや回想シーンで二人の過去を小出しに暴きつつ描きます。

で、よくある映画だと、反発しあう二人が徐々に互いを認め合いハッピーエンドとあいなるわけですが、この映画は少し違いました。なにしろ二人は過去の重すぎる出来事が発端となって、完全に閉じた自分の世界で生きるようになった人達なので、そう簡単に相容れることはありません。愛を失う恐怖から立ち直れない臆病な老女と、魂をストレートにぶつけることしかできない女囚は、延々とボタンのかけ違いをして、なっかなか互いを許容しないのです。まあそれでもラストはそれなりに歩み寄りがあるのだけど、それもほんの少し、やっと兆候が見え始めたというくらい。間違っても握手して終わりなんてことはしません。安易な共感など唾棄すべきものだとでも言わんばかりの、堅固なまでの自我の対立。これがそこらの生温い映画とは違って、この映画を一筋縄では行かない、ハードな感触のある作品にしていると感じます。

最大の見せ場は、やはりラストの4分間。それまでの約2時間は、この大爆発に収束するための長い前フリだったのだ、このシークェンスのために、これまで抑えて抑えて圧力を上げていたのだ、と納得できました。


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自虐の詩

自虐の詩 プレミアム・エディション

監督:堤幸彦
2007年 日本

ぐうたらで粗暴な元やくざの男と、健気にも文句一つ言わず彼に尽くす内縁の妻の日常を、堤幸彦らしいトリッキーな演出にナンセンスなユーモアを交えて描いた物語。無駄と蛇足だらけで、決してよくまとまっているとは思えませんが、それでも私は好きですよこの映画。

誰もがさっさと別れるべきだと太鼓判を押すようなロクデナシ男と、なぜだかいつも笑顔で彼とのつましい生活を楽しんでいる女。傍目から見れば、それは不幸な暮らしぶりに思えるかもしれない。しかし女の生い立ちや、男と出会って現在に至るまでの経緯が回想シーンで明かされるにつれ、人はあまりにも多くのものを背負っているのだと、つい忘れがちなことに気付かされます。

「幸や不幸など測れるものだろうか?」 ヒロインは、そう我々に問いかけます。ましてや他人の幸や不幸をや。“彼は幸せな男だよな羨ましい”、“彼女は不幸に違いないよ可哀想に”。その人が何を背負って生きてきたかも知らずに、今現在の断面だけを見て、そんな身勝手な評価を下してしまうことが、私にはある。その安直な独断の裏にある見え透いた独善の、度し難いほどの愚かさを痛烈に指摘されたようで、堪えましたですよ。ボディに一撃喰らったような。

嫌われ者だった学生時代のヒロインと、やはりクラスの皆から総スカンを食っている唯一の友人・熊本さんのエピソードが、ベタながらなかなか良かったです。熊本さんは容姿といいキャラといい強烈過ぎます。ラストのあるシーンを観て、彼女の人生がどんなだったのか想像してしまいました。


さ行 | comments(0) | trackbacks(0)

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

監督:三木聡
2005年 日本

私の勝手な想像では、トンデモ精神科医の珍妙な治療法が、なぜか奏功して結果的には患者のためになる、という感じの話しだと思っていました。しかし患者達が病気を克服できたのは、ほとんど偶然の賜物というか、成り行き上そうなったというだけなのですヨ。となると、つまらない冗談を連発するだけのあの医者の存在価値ってなんなのか、と疑問を持ってしまいます。原作はもっと深みのある物語なのでしょうか。未読なので判りません。

あと、無闇にエキセントリックな人物造形が、ただ上滑りしてゆくのはとても虚しい。とって付けたように“変”を演出されると、わざとらしくて鼻白んでしまいます。学生の自主制作ビデオか、はたまた小劇団の寸劇でも観ているようで辛いものがありました。


あ行 | comments(0) | trackbacks(0)

クワイエットルームにようこそ

クワイエットルームにようこそ 特別版 (初回限定生産2枚組)

監督:松尾スズキ
2007年 日本

オーバードーズ(薬物過剰摂取)によって精神病院に強制入院させられたヒロインが退院するまでを描いた映画です。

精神病院が舞台の映画といえば、『カッコーの巣の上で』という言わずと知れた名作があるし、新しめだと『17歳のカルテ』がなかなか良かった記憶があります。それらに対しこの『クワイエットルームにようこそ』は思い切りコメディタッチで、まあふざけてると言えばふざけてる。しかしながら、一般的に異常と言われる人々を描くことによって、我々が信じて疑わない正常というものの異常性を炙り出しているという意味では、上の2作品と共通する点がないわけでもありません。とはいえやはり目立つのはオフビートな笑いの部分であり、しかつめらしい顔をして見るような映画ではないんですけども。

一つ理解できなかったのは、まるで自殺願望の有無が異常性を表すカギとなるかのような物言いです。長らく自殺願望を抱えながら生きてきた私にとって、それは最早自分の一部であり、物事の価値を決める際に重要な“物差し”として機能しているものです。おそらくこれからも心のどこかで死にたいと願いながら、私はその物差しを使って様々なものを測り、93歳まで生きる予定でありますが、それはやはり異常なことなのだろうか。そりゃ当然異常でしょ、と言われれば二の句が接げませんけどもネ。


か行 | comments(0) | trackbacks(0)

フリーダム・ライターズ

フリーダム・ライターズ スペシャル・コレクターズ・エディション

監督:リチャード・ラグラヴェネーズ
2007年 アメリカ

主演のヒラリー・スワンクが製作総指揮までしているということで、かなり気合入ってるんだろうなと思いつつ観てみたのですが、それにしちゃあ随分な映画を作っちゃったな。

原作はベストセラーにもなった実話で、ギャング・銃・貧困・虐待と、アメリカが抱える問題をこれでもかと詰め込んだようなとある街の荒廃した高校を舞台に、新米女教師の奮闘によって生徒達が人生に希望を見出してゆく姿を描いた映画です。

で、何が随分な映画なのかというと、事実を追うことに躍起になっているところ。何しろ数十人の生徒それぞれが問題を抱えていて、それを二年かけて更生させてゆく物語だから、2時間の映画で全てを描けるはずもなく、当然ながら端折ることになるわけですが、どこを描いてどこを描かないかという取捨選択が下手なのです。熱血教師と生徒に話しを絞ればいいものを、教師の夫だの親だの、余計な情報を入れすぎ。

百歩譲って、プライベートな部分も描くことで教師の人間性を炙り出したかったというならば、なぜ彼女が仕事に熱中しすぎるあまり夫と擦れ違って離婚するというプロとしては失格と言っても良いほどののめりこみ方、愚かなまでの情熱を持つに至ったのか、そこをきちんと描いてくれないと、彼女の人間性なんてさっぱり判りません。なのに彼女の暴走ぶりだけを見せられても、「この人いったい何にとり憑かれているの?」と疑問ばかりが頭をよぎります。

以前、『奇跡体験!アンビリバボー』というテレビ番組で、やはり原作に基づいてこの出来事を紹介していたのを観ましたが、その方がよほど無駄なく、面白かったですよ。卒業後の生徒達の近況にも触れていましたし。実はそこが重要で、卒業してもやっぱり現実は厳しくて元の木阿弥でしたってんじゃあ意味がないのであって、この映画も無駄を詰め込むならば生徒のその後こそ描くべきだろうに、と私は思いました。


は行 | comments(0) | trackbacks(0)

麦の穂をゆらす風

麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション

監督:ケン・ローチ
2006年 イギリス、アイルランド、ドイツ、イタリア、スペイン

1920年のアイルランドが舞台。イギリスからの独立を目指して共に戦う兄弟の半生を軸に、講和条約締結によって内紛が起きるまでを描いた社会派ドラマです。

真面目というか手堅いというか、直球勝負で遊びがない映画です。そのぶんダイナミズムには欠けるけれど、長きに渡って迫害され続けたアイルランドの歴史の一端が興味深くはありました。イギリス軍の蛮行があまりに悪辣であるため、一瞬、イギリスが悪でアイルランドが善という単純な二極化に陥りそうになったところで、主人公が裏切り者の同胞(まだ子供と言ってもいい年齢)を銃殺してしまいびっくり。こちらの安易さを見透かされ、思い切り冷や水を浴びせられたようでした。

イギリスとアイルランドの間で締結された講和条約は、真の意味でアイルランドの独立を謳ったものではなかったわけですね。あくまでイギリス領であることを前提に、ま少しは自治権を認めてやろうじゃないかという代物。だもんだから主人公達は、とりあえずこれでいいじゃん派と、これじゃ意味なくね?派に分かれ、やがて内紛へと発展してしまう。両者が議論を交わすシーンがあるんですが、どちらの言い分ももっともなのです。それぞれが大儀をかかえ、大儀を全うしようと、多大な犠牲を払いつつ戦い続けるんですな。そして主人公は、「こんなことまでして意味があるのか?」と呟きます。じゃあどうすりゃ良いのよと重い気分で考えてみるも、私に答えが出せるはずもなく。

イギリスがアイルランドを支配するに至ったそもそもの発端は12世紀、ローマ法王が時のイギリス王・ヘンリー2世にアイルランドの領有を認めたことから始まったようです。その後、植民地支配が激化する背景にはプロテスタントによるカトリックの弾圧があったらしく、まあ要するに宗教問題を切り離しては考えられないわけですが、全く宗教ってやつは、いつの時代も戦いの火種を作る厄介ものでございます。神さえいなけりゃ世の中もう少し平和だったのではないか。つかもうここまで来ると、ヒトという戦争が大好きな生き物は、戦争を正当化するための大儀として神を作ったのではあるまいかとさえ思えてきます。


ま行 | comments(0) | trackbacks(0)

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝 リミテッド・バージョン [DVD]

監督:ロブ・コーエン
2008年 アメリカ

お馴染み、冒険活劇の第三弾。今度は舞台を中国に移し、始皇帝と思しき男の邪悪な企てを阻止すべく、主人公一家が命がけの大冒険をするのだー、の物語。もうエジプトもミイラも関係ありません。

この映画を一言で言うと、物量映画。とにかく質より量。ただグズグズと引っ張るだけで的を射ないアクションといい、まるで生命体とは思えない雪男や詳細を省かれた骸骨軍団などのCGといい、作り手はユーモアと思っているのか知らないが単なる程度の低い軽口の応酬といい、とにかく量でごり押ししようという目論みです。

更に。主演のブレンダンは貫禄が無く大学生の父親には見えないし、レイチェル・ワイズの降板で新たに起用されたマリア・ベロは逆にババ臭過ぎるうえにこれまでの奥さんとはキャラが違っているし、皇帝役のジェット・リーは大したアクションを見せるわけでもなく彼が演じる必要性がないしで、キャスティングへの違和感がありまくりなのでした。

あんまり退屈だったから、俺は一緒に観ていた彼女に思わずこう訊いたんだ、「この映画あと何分くらいあるの?」と。すると彼女はこう答えた、「んと、今55分くらい経ってるから、映画は1時間40分くらいで、だから、えーっと」

ってね。


は行 | comments(0) | trackbacks(0)

アクロス・ザ・ユニバース

アクロス・ザ・ユニバース デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]

監督:ジュリー・テイモア
2007年 アメリカ

1960年代のニューヨークが舞台。まだ見ぬ実父に会うためイギリスから渡米したジュード、ジュードと恋に落ちるも反戦運動にかまけてしまうルーシー、ルーシーの兄でベトナムに徴兵されるマックス、彼らのルームメイトでロックシンガーのセディとギタリストのジョジョ(ジャニス・ジョプリンとジミ・ヘンドリクスってところか)、やはりルームメイトでレズビアンの元チアリーダー・プルーデンス。交錯する6人の人生模様を、サイケデリックな映像表現とともに、ビートルズの楽曲に載せて描いたミュージカル青春映画です。ラブ&ピースってね。

ビート文学だの、アメリカン・ニューシネマだの、ロックミュージックだのを色々摂取してきた私は、当時のアメリカの政治や風俗をある程度は知っていますが、知っているだけで判ってはいません。だからこの映画が描くアメリカの空気にリアリティがあるのか判断できないのですが、ただ、私にもかつてはくだらない仲間がいて、そんな連中と馬鹿げたことをやり、ふとしたことに一喜一憂する無駄に繊細だった若かりし頃があって、この映画はその頃のことをリアルに思い出させてくれました。だから恥ずかしいような、くすぐったいような気分がしました。

歌は役者さんが台詞と同様、実際に生で唄っているのを収録したそうですが、かなり上手いです。演技しながら、時には走り回りながらですよ。しかもほとんど新人さんらしいじゃないですか。世界中の老いも若きも、誰もが知っているようなスタンダードナンバーを、一本の映画にできるほど量産したバンドがいたということからして凄いのに、全くアメリカやイギリスって国はいったいどうなってんだ。日本では絶対……とまでは言いませんが、少なくともまだ数十年は作れないタイプの映画です。このレベルの差はどこから来るんでしょうか。

劇中で使われているビートルズの楽曲数は、映画関係の大手サイトによると33曲となっています。しかしエンドロールのリストを数えると34曲です。おそらくラストで“All You Need is Love”に一瞬だけ被さる“She Loves You”をカウントするかしないかの違いだと思われますが、実はここ、音楽とシナリオとがばっちり噛み合った、この映画の中でも屈指のウマイ箇所ですので、聞き逃してはいけません。


あ行 | comments(0) | trackbacks(0)

ブラック・スネーク・モーン

ブラック・スネーク・モーン スペシャル・コレクターズ・エディション

監督:クレイグ・ブリュワー
2006年 アメリカ

アメリカ南部の田舎町。妻に浮気された元ブルーズマンの中年男、ラザラスは、敬虔なクリスチャンということもあって不貞を許せず、妻は去って行った。ある日、ラザラスは怪我を負って道端で意識を失っている若い女を見つけ、家に連れ帰り看病する。女のうわ言をヒントに町で情報収集をしたところ、彼女の名前はレイといい、恋人がありながら男と見れば誰とでも、所構わず股を開いてしまうセックス依存症であるという。レイの中に妻と同じ“悪魔”を見たラザラスは、彼女の身体に鎖を巻き付けて監禁し、更生させようと試みる――。

説明文とジャケットだけ見ると、少し猟奇的なB級エロティック・サスペンスのようですが、違います。痩せっぽちで生っちろい半裸のクリスティーナ・リッチに、白髪混じりのひげを蓄えた身なりの汚いサミュエル・L・ジャクソンが鎖を巻き付けて、「お前の中の悪魔を俺が追い出してやる!」と叫んだりしますが(むしろ狂っているのはオマエの方だろう)、ラザラスやその仲間との交流によってレイが“やまい”を克服してゆく過程を描いた、断じて真面目な、ちょっと心温まるヒューマンドラマです。

過去に受けたトラウマが呪縛となって自らを傷つけてしまうレイの病状は深刻なのだけれど、アメリカ南部ののどかでゆったりとした雰囲気と、バックで流れ続けるブルーズの効果もあって、シリアスながらそう重苦しくはありません。おそらくレイほど深刻な依存症を抱えていたら、例えば薬物依存症患者のためのダルクのようなところに入るなどして、長期的な構えで問題と向き合う必要があるはずで、そういう意味ではリアリティに欠ける物語ですが、しかしラストは、一応希望を見出せる終わり方ではあるものの、根治が容易ではないこと、彼女と恋人のこれからが前途多難であることを示しており、絵空事というほど現実離れしているわけではなかったので、そこは良かったと思います。


は行 | comments(0) | trackbacks(0)

ショーン・オブ・ザ・デッド

ショーン・オブ・ザ・デッド

監督:エドガー・ライト
2004年 イギリス

主人公のショーンは優しいところのある反面、優柔不断で、自己実現欲求などとは無縁の冴えない男。ルーズな幼馴染と夜な夜なパブに入り浸り、ついでに恋人とのデートもそこで済ませ、勤務先では17歳のガキのアルバイトにナメられる。とうとう恋人にも愛想を尽かされた彼は、今度こそ生まれ変わって彼女とよりを戻したいと願うのだが、そんな矢先、彼の暮らすロンドンの街にゾンビが溢れ始める――。

ダメ男が危機的状況に直面することで奮起し、成長してゆく様を、ロメロ監督版ゾンビのパロディを基にした残虐なシーンと、少々不謹慎でブラックな笑いを交えながら描いたホラーコメディでした。先日観た『ホット・ファズ』が面白かったので、同じくエドガー・ライト(監督・脚本)&サイモン・ペッグ(主演・脚本)コンビによるこの映画を観てみたわけですが、個人的には『ホット・ファズ』の方が好みです。

とはいえ良いシーンも数々ありました。強烈な印象が残っているのは、Queenの“Don't Stop Me Now”をBGMにパブで繰り広げられる乱闘シーンです。無意味さが最高に馬鹿馬鹿しくて、思い出しても笑います。そうかと思えば、ゾンビものらしくきちんとグロテスクなスプラッタ描写もあり、特に『死霊のえじき』のパロディには、頑張ってんなあと感心さえしました。ある人がゾンビに噛まれたことで始まる仲間割れのシークェンスなんて、心理描写がしっかりなされており、なかなかスリリングでした。ゾンビ化したルームメイトに対する決め台詞も、それ自体カッコイイものではありませんが、状況的に可笑しくて良かったです。


さ行 | comments(0) | trackbacks(0)