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やわらかい手

やわらかい手 スペシャル・エディション

監督:サム・ガルバルスキ
2007年 ベルギー、ルクセンブルグ、イギリス、ドイツ、フランス

難病に苦しむ孫の手術費用を捻出すべく、性風俗店で働き始めた初老の女性が、自立心に芽生え人生の意味を見出してゆくという物語です。

主人公が働き始める性風俗店は、薄いベニア張りのような安普請の壁に開いた穴へ突っ込まれた男性客の一物に、裏で控えた女性が手でサービスするというもの。今はどうか判りませんが、安価で手っ取り早いこの手の風俗店は、かつて日本にもありました。女性が表に出なくて済むので、おばさんや、時にはオカマが働くこともあったようです。

設定が設定であるだけに、少々おっかなびっくりな感じで見始めましたが、意外とセクシュアルなシーンは少なく、それよりむしろ、初めは戸惑いながらも次第に隠れた才能を発揮して売れっ子になってゆく主人公や、彼女に群がる男どもの滑稽な様子をコミカルに、また、主人公の行いを恥じる実の息子(つまり孫の父親)との確執や――これには腹が立ちました。オマエの子供の為に身を呈して働く母親を淫売呼ばわりするとは何事か!と――、主人公と店の経営者の盲目になりきれない大人の恋愛の顛末などは、ほろ苦く描かれていて良かったです。

それにしても主人公といい、孫の母親(主人公の義理の娘)といい、覚悟を決めてなりふり構わなくなった女は強いなと。最後までウジウジウダウダやっているのは男の方だったり。全く不甲斐ない。


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ヨコハマメリー

ヨコハマメリー [DVD]

監督:中村高寛
2005年 日本

かつて横浜にいたそうです。“ハマのメリー”と呼ばれた老婆の娼婦が。

腕から手、胸元から顔、人目にふれる肌という肌に、これでもかと白粉を塗りたくり、服装は白が基調のヒラヒラフリフリ、たぶん外国映画のヒロインを真似たのでしょう、そんな出で立ちで、横浜の街角に立ち続けた街娼のメリーさん。この映画は、メリーさんと関わりあった人達の証言から、彼女の人間像に迫ろうというドキュメンタリーです。

この映画が取り上げるのは、ほとんど憶測ばかりです。メリーさんはきっとこう思っていたのではないか、たぶんこういうことだったのだろう、と彼女の知人が喋る様子を延々と映し出します。だからメリーさんの実態は、最後まで判りません。彼女が実際に何を思って、どんなふうに生きてきたか、何の確証も得ないまま、こちらはメリー像を作り上げるわけです。これはドキュメンタリー映画としては致命的な欠陥であるはずなのですが、それでも面白いんですね。おそらくメリーさんのことを結局、誰も判らないから、確認の取り様が無いから、私たちは面白がっていられるのでしょう。

メリーさんは自分について、あまりにも語らなかったようです。だから彼女の実態を知る人は、とても少ない。横浜の街角に立っていた白塗りのメリーという御婆さんを、街の景色として認識していた人は大勢いたはずなのに、彼女が何者かはほとんどの人が知らないのです。一種異様な都市伝説みたいなものとして、そこに“あった”んでしょうね。

ラストで、とある田舎町の養老院に暮らすメリーさんが映し出されます。いや、もうメリーさんではありません。本名の、なんたらかんたらさんです。彼女は穏やかな笑みを浮かべた、可愛らしい、気品のあるお婆ちゃんでした。


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善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
2006年 ドイツ

舞台は1984年の旧東ドイツ。国家保安省“シュタージ”の職員である冷徹な主人公が、反体制派の疑いがある作家の監視・盗聴を行なううち、人間性を回復してゆくという物語です。

評判どおり、確かに良い話で、感動的です。サスペンス要素も少しだけあり、終盤の展開には引き込まれ、固唾を呑んで見守りました。だからケチをつけるつもりは毛頭ありませんよ、娯楽映画としては。

何から書こうか。まず、主人公の心変わりが性急に見えます。彼は非人道的な、ほとんど拷問と言って良い方法を用いることも厭わず、反政府分子には徹底的に吐かせるような男です。おそらくこれまで何人もの人間を監獄送りにした、プロ中のプロです。それがたった一人の作家の監視活動で、心変わりなどするものでしょうか。例えば作家とその恋人が固い愛情で結ばれていることを知ったり、自殺した老演出家への餞に作家が魂を込めて演奏したピアノソナタを聴いたりしたとしても。

主人公には元々、そういうものに感応する素養があったのかもしれません。シュタージだろうと、KGBだろうと、ナチス党員でさえ、生来非人間的だったはずはなく、彼らの大半は生真面目に職務を全うしていただけなのでしょうから。ただ、彼らには圧倒的に想像力が欠けていた。主人公にしたって、これまで投獄してきた人間にも愛するモノがいた・あったことを想像できなかった・しなかったから、失職も転職もせずに済んでいたわけです。それが何故この期に及んで急に“目覚めた”のか。

そのきっかけになったこととして、作中で与えられているのは、先に書いたとおり愛と芸術なのだけど、私はどうも、この監督(兼脚本家)はそれらを過大評価しているように思います。確かに愛や芸術は人の価値観を変えかねない力を持っていますが、即効性があるとは思えないんだな。もっと長時間かけて人の心を侵食してゆくものでしょう。まして主人公は、これまで何人ものプライベートな音を聴いてきた、いわば耳年増みたいなものでありながら、それでも冷酷な職務を長年に渡り全うすることのできた、頭ガチガチの中年男です。耐性の無い多感な思春期の少年が、『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ翌日に急変するようなことが彼に起こるとは、とても思えないのですヨ。

愛と芸術、そして辿り着くのは感動。結構なことではありませんか。しかし、いかんせん現実味が不足しているのです。せめて主人公の価値観が無数のきっかけによって徐々に変容してゆく過程を、もっとつぶさに、もっと執拗に描いていれば、少しは現実味のあるファンタジーとして観られたかもしれないのに、とても残念です。

ただ一つ、私が救いを感じたのは、堅牢な愛で結ばれていると思われた作家と恋人との間に、無残にもひびが入るところでした。もしもこれがなかったら、この映画は『一杯の掛けそば』になっていたところです。


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ユー・キャン・カウント・オン・ミー

ユー・キャン・カウント・オン・ミー [DVD]

監督:ケネス・ロナーガン
2000年 アメリカ

数年ぶりに再会した不肖の弟に振り回されながら自身の生き方を模索するシングルマザーの物語でした。

実に平凡な姉弟・家族のあり方と彼らの日常が淡々と描かれており、劇的な要素はほぼ皆無。リアリティがあると言えばあるんだけれども、だからどうしたという感じがしないでもない。幼い頃に事故で両親を失ったことが彼らの人生に影を落としているのだとしても、結果的には二人とも生きたいように生きているオトナなので、どうぞ御自由にとしか言いようがありません。


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八つ墓村

八つ墓村 [DVD]

監督:野村芳太郎
1977年 日本

刀と猟銃で村人を殺し回る山崎努氏を観たいがために借りてしまいました。観直してみるとさほど怖くないばかりか、至る所で表現の冗長さが気になって退屈しきり。音楽と田中邦衛氏の生首はやたらと印象的。連続殺人事件を扱いながら祟りの可能性も否定しきらないオカルト風味のサスペンス映画です。


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ゆれる

ゆれる [DVD]

監督:西川美和
2006年 日本

幼馴染の女性を殺害した容疑で逮捕された兄と、兄を慕う弟の物語。

兄弟間に横たわる微妙な溝や、加害者と被害者を分ける不明瞭な差異が、ゆれる一本橋をメタファーに、何と言うか、細部を極力描かないことで全体像をモヤモヤと浮かび上がらせるといった手法により表現されていました。都会の色に染まった弟がカーラジオを聴きながら車を駆る、アメリカ映画を思わせるような導入部に若干の違和感を覚えたものの、それによって彼が辿り着いた田舎の古臭さやら閉鎖性やらしがらみやらといった鬱陶しい諸々の要素はより際立って見え、その時点でああこの監督巧いかも、と。心理描写をことごとく排した作りであるためか、ラストでようやくストレートに感情が表現されると、その威力たるや爆発的で、私は単純に感動しました。


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歓びを歌にのせて

歓びを歌にのせて

監督:ケイ・ポラック
2004年 スウェーデン

主人公のダニエルは有名な音楽家で、世界の桧舞台に立つような人です。しかしそんなこととは裏腹に彼は孤独で、虚しさを感じているご様子。スケジュールは何年も先まで埋まっていて忙殺状態、身も心もボロボロになるまで音楽一筋で突っ走ってきたのに、もっと心からの音楽をやりたいという思いは、実現できずにいたからなんだな。病気をきっかけに音楽なんかやめようと決心した彼は、生まれ故郷に戻って静かな余生を一人過ごそうとしますが、アマチュア聖歌隊の指導に当たるよう村人から強引に迫られて引き受けることに。

村人達はそれぞれに家庭の問題やら何やら色々と抱えています。小さな村だから、彼らは互いに把握しているんだけど、見て見ぬふりです。田舎の人間は情が深いなんて嘘。オープンマインドなんかどこにもない。みんな孤独で傷だらけ。小さな村で面倒が起きると住み難いから、楽しげに振舞って上手く隠しているだけなんだ。そこにダニエルが来て、長年の音楽活動で実現できなかったこと――心からの音楽――を実践するために、「心を開くんだ!」とやり始めちゃったもんだから、それまで抑圧していた感情やおざなりにしてきた問題が一気に噴出して、村人達に変化が顕れるわけ。そのことはダニエルにも影響を及ぼし、彼もまた心を開く事の大切さを学び、忘れていた音楽の楽しさを取り戻してゆくのでありましたとさ。

似通った物語は沢山ありますが、この映画はその中でもかなり良かったです。

村人達の人望を一手に集めていた神父の威厳が、ダニエルの出現によって失墜するところなんて面白い。神父の威厳は所詮、神の言葉を借りることで保っていた仮初め、メッキに過ぎませんでした。メッキはダニエルの奔放さ(神父が言うところの罪)で剥がされます。奔放さとは、人生に対する正直さであり、謙虚さでありましょう。しかし神父にはそれが判らない。自尊心を打ち砕かれそうで悶々の神父に妻が言う、「“罪”なんて無いのよ。そんなものは教会が威厳を保つために作り出した嘘」という台詞は喝采もの。そのあたりの神父と妻のやり取りもそうなんだけど、宗教観や人生観に切り込むシーンがいくつかあって、どれも示唆に富み印象的でした。

あと、ラストが熱いです。この手のお話しだと、最後にコンクールに出場して優勝、なんてのがよくあるケースで、この映画も例に漏れずコンクールには出場しますが、賞レースや歌の出来不出来はどうでも良く、もっとこう、みんなの音が共鳴しあって一つの楽器になったような一体感と言いましょうか、それは複数人で音楽をやる際に最もエキサイティングであり、滅多に得られない、他の物には替え難い、暖かく快楽的な瞬間であり、おそらくバンド等の経験者なら判り易いと思いますけども、そんな瞬間を見事に映像化していて、観終わった後しばらく喋りたくなかったです。まあ実際には、横にいたカノジョが「感動した!」だの「泣いた!」だの「良かった!」だのガタガタうるせぇので、渋々「そうですね」と言いましたけど。も。


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ユナイテッド93

ユナイテッド93

監督:ポール・グリーングラス
2006年 アメリカ

『ワールド・トレード・センター』は、事実を基にはしていますが、完成度の高い一つの創作物であり、綺麗過ぎるくらいに洗練された物語でした。それに比べてこの『ユナイテッド93』は、同時多発テロが起こったあの日、航空管制官も軍も政府も錯綜する情報に惑わされ、なかなか事態を把握できずに右往左往する様子を、冗長なほど執拗に描くなどしており、映画としての完成度は高いと言えませんが、あくまでリアリティを重視した再現ドラマとしてはよく出来ていて、息苦しいほどの緊迫感がありました。

ハイジャックされた4機の旅客機のうち、2機は貿易センタービルに、1機はペンタゴンに激突。この映画の主な舞台となる、残る1機のユナイテッド93便は、乗客たちの反撃によりテロリストの目的を阻止したものの、やはり墜落して生存者なし。これらの事実は予め知っていたけれど、それでも乗客たちを応援せずにはいられませんでした。

結局は墜落するわけだから、やり切れない気持ちは残りますが、生き残れる僅かな可能性に賭けて戦った乗客たちに対し、少なくとも敬意は表したい。ただ、テロリストとは断固として戦うという、アメリカ政府の硬化した態度を肯定するつもりはありません。乗客たちは、それしか方法が無いから戦ったのであって、だから皆も戦いましょうという一種のプロパガンダ的な側面がこの映画にあるとしたら、それは違うでしょ、と言っておきます。


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夢駆ける馬ドリーマー

夢駆ける馬ドリーマー スペシャル・エディション

監督:ジョン・ゲイティンズ
2005年 アメリカ

馬の調教師である主人公は、実力はあるが準備不足の牝馬“ソーニャ”を、金儲けしか頭にないオーナーの命令で止む無くレースに出場させるが、案の定ソーニャは転倒し負傷する。ソーニャの処分を求めるオーナーの意向に納得できない主人公は、日頃から馬と親しんでいる幼い娘の手前もあり、ソーニャを買い取ることにした――。

故障を負った馬を世話する調教師一家の家族再生物語を軸に、競走馬にとって致命的な怪我を負いながらも再起した馬がレースで勝ってしまうという、奇跡のようだが実際にあった話を描いています。

とてもオーソドックスな感動映画で、良かったねとしか言いようがありません。競走馬の美しさはそれなりに味わえました。特に走っている姿は素晴らしい。でも残酷な美しさだね。人工的に作られた、ある意味では奇形だから。

それにしても競走馬には金がかかるんですな。種付けに200万、レースに登録して500万、出場するなら更に1000万ですか。馬の血統やレースのランクによってはもっとかかるのかも。まあ、それで立派な成績を収めることができるようになれば、充分に元は取れるということなんでしょう。

娘役を演じるダコタ・ファニングの演技は、大人のハリウッド女優がよくやるような表情・仕草を器用に真似ているという感じで、確かに巧いと言えば巧いんだろうし、カンがいい子供なんだろうとは思いましたが、一人の役者として魅力があるとは到底思えませんでした。


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許されざる者

許されざる者

監督:クリント・イーストウッド
1992年 アメリカ

イーストウッドの監督としての地位をカッコたるものにした西部劇。西部劇といってもマカロニウエスタンのようにドンパチがメインではありません。罪を背負った哀しい男の物語です。イーストウッドも良いけれど、何しろジーン・ハックマンが良い。正義という暴力を振るうことに一寸の躊躇いも無い男。

罪を犯した者は、罪人として生き、罪人として死んでゆくしかない。贖罪なんて不可能なのだ。


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