監督:ペドロ・アルモドバル
1999年 スペイン
登場人物は波乱に富んだ人生を送る曲者ばかり。身勝手で過激で計画性がなくて、道徳や常識というお仕着せを度外視したところで生きている、早い話がどーしよーもない人達。なのに観ていて心地良いのは、監督の視線に愛情が満ちているからか。決して女は強いとか母は強いなどという戯言は言っていない。女も男もオカマも母も父も、みな脆い。脆いから戦ったり逃げたりするのです。だからドラマが生まれるわけダナ。
色彩感覚の非凡さは監督の才能がどうこうというよりスペインという土壌が生んだ賜物ではないかと思いました。海の家の軒先にあるビーチパラソルみたいなチープでけばけばしい傘の色にへこたれない強さを街そのものが持っているのでしょう。
監督:リチャード・アッテンボロー
1982年 イギリス、インド
ガンジーほどラジカルで残酷な革命家も珍しいですヨ。非暴力を貫きつつ差別や圧制に屈しなければ、一方的な犠牲者が出る事は彼もよく判っていたはずで。しかも犠牲は必ず末端の一般市民が払うことになる。自身の死を覚悟するのは当然としても、それを一般市民にまで「暗に」求めたガンジーの発想は、変革の為なら多少の犠牲は厭わないというテロリストのソレと全く違いませんからして。ん。
で、そんなことは当のガンジーも重々承知だったのでしょう。ラストになっても彼の顔が晴れなかったのは敗北感によるものであるということが彼の付き人の台詞によってわかります。この作品の核はそこにあると言っても良いかもしれません。口先だけの似非平和主義者とは一線を画したガンジーでさえなしえなかった真の意味での和平が、いかに遠いところにあるか。命懸けの覚悟ではまだ足りないんだから、暗澹たる気分にもなるってもんです。